①2011年卒業(第36期生)カナダ国トロント大学病院 腹部移植・肝胆膵外科 後藤徹先生

2011年卒業(第36期生)カナダ国トロント大学病院 腹部移植・肝胆膵外科 後藤徹先生

こんにちは!秋田大学大学院医学系研究科/医学部2011年卒業(第36期生)の後藤 徹と申します!現在は北米最大の移植センターであるカナダ国トロント大学病院で腹部移植・肝胆膵外科医として勤務しています。

Toronto General Hospital

【秋田大学医学部教育の卒業後につながる実力形成】

秋田大学は皆様ご存じの通り国公立大学の中ではカリキュラムが厳しい大学の一つですが、カリキュラム外での教育にも熱心な大学と思います。

私は当時の生理学の教授の勧めで1年生の夏にオックスフォード大学に英語研修に行き、春にはピッツバーグ大学医学部に1か月留学しました。そこで見学したヒト臨床の移植手術に魅せられ、2年生から消化器外科の門戸を叩き、研究や臨床のカンファレンス、手術見学をする機会を頂きました。そしてラットを用いた外科基礎研究で日本外科学会総会での発表、フランスでの国際学会発表を経て学長賞を受賞しました。

この経験はその後の私のキャリアである北米最大の移植センターでアジア人唯一の外科医という現職に大きく影響しています。基礎研究を学生時代から行っていた経験は院生留学という道を切り開きましたし、大学から医学英会話に接した経験は現在北米で臨床医として勤務する基礎になっています。また学生時代からラットの肝切除手術を主体的に行い、多数の県内病院で手術に入らせて頂いた経験は、外科医になってから肝臓外科の手術コンテストで優勝したことの原点とも言え、学生時代からのすべてが今につながっています。『道に迷ったら最も厳しいと思ういばらの道を選べ。選んだら結果を出すまで曲げるな』という外科教授の言葉を実践してこそのキャリアです。この場をお借りして関係者の皆様には御礼申し上げます。

【現在の目標と将来展望】

私の専門は腹部臓器の『灌流保存』です。灌流保存とは日本のみならず全世界が抱えるドナー不足を解消する可能性を持ったGame changer techniqueです。特に先進諸国に比べ圧倒的に移植数の足りない日本ではこの問題は常に喫緊の課題です。

図

従来臓器保存のゴールデンスタンダードであった単純冷保存(臓器保存液に漬けて氷で保存する)と異なり、下図に示しますように人工心肺を使って、ドナーの腹部臓器全体(Normothermic regional perfusion)または個別(Ex situ perfusion)に臓器を灌流して保存を行います。灌流しながら栄養と老廃物の除去を行い臓器の状態をよりよく保存し、かつ灌流中に機能測定や臓器の治療ができるメリットがあります。先進国で臨床応用されている肝臓のEx situ perfusionでは、心停止後ドナーや高齢ドナー、脂肪肝ドナーを対象にその機能を測定し安全な移植を確立しています。また過小グラフトの再生肥大を目指す超長期保存(小さいグラフトを大きくして移植する)モデルや炎症性サイトカイン除去フィルター付きの灌流機器など日進月歩で開発が進んでいます。

移植臓器保存の革新的新技術

私はこの技術を学ぶためトロント大学 腹部臓器保存ラボにアジア人として初めて留学し、計250回以上の大動物の灌流保存および移植手術を行い、現在その功績から臨床で移植・灌流外科医として修練を積んでおります。2019年、2022年の国際肝移植学会では灌流保存の講師に選ばれ大動物モデルでのライブデモンストレーションを行いました。この最新技術を日本に導入し、移植医療をもっと多くの人に安全に行うことが目標です。北米と日本の二軸の考え方を持つ外科医として日本の医療をより良い方向に変えていくことができればと考え精進しています。

各種証明書の申込方法及び発行について

各種証明書(卒業・修了証明書、成績証明書等)の発行は次の方法により、発行される証明書の対象となる卒業生・修了生本人が申し込んでください。