お知らせ
2024年04月18日(木)
精神科学講座 竹島 正浩 准教授が代表著者となる学術論文が国際誌『JAMA Network Open』に掲載されました
論文タイトル
ガイドラインで推奨された睡眠薬における単剤治療の失敗と長期処方リスク
著者名
竹島正浩,吉沢和久,小笠原正弥,工藤瑞樹,伊藤結生,綾部直子,三島和夫
掲載誌
JAMA Network Open
研究等概要
不眠症の薬物治療において,アメリカ睡眠医学会のガイドラインは特定の睡眠薬の単剤療法を推奨しているものの,どの睡眠薬が不眠症治療で成功・失敗しやすいのか,どの睡眠薬の長期処方リスクが高いのかは示しておりませんでした.
秋田大学精神科学講座の竹島正浩准教授と三島和夫教授らの研究グループは株式会社JMDCの診療報酬データを用い,睡眠薬をはじめて処方され,さらにその睡眠薬がアメリカ睡眠医学会で推奨された睡眠薬(スボレキサント,ラメルテオン,エスゾピクロン,ゾルピデム,トリアゾラム)だった患者23万9568名を抽出し,睡眠薬処方を初処方から6ヵ月間追跡しました.
その結果,対象患者のうち10.3%に単剤治療の失敗(他の睡眠薬への変更,もしくは他の睡眠薬の追加と定義)が認められました.単剤治療の失敗はエスゾピクロンと比べ,ラメルテオンで多く,ゾルピデムとトリアゾラムで少なく,エスゾピクロンとスボレキサントに有意差はありませんでした.また,単剤治療が失敗しなかった患者のうち,10.8%が6ヵ月の長期処方に至っていました.睡眠薬の長期処方(6ヵ月間連続処方と定義)はエスゾピクロンと比べ,スボレキサントとラメルテオンで有意に少なく,その他の睡眠薬はエスゾピクロンと有意差はありませんでした.
本研究は不眠症の種類(短期不眠障害もしくは慢性不眠障害)や不眠症の重症度,医師の処方行動,患者の治療の好みなどの臨床情報を欠いているため,どの睡眠薬が最も治療の成功・失敗が多いのかに関する結論を出すことができませんでした.また,本研究はスボレキサントやラメルテオンなどの新規睡眠薬は長期処方リスクが低いことを示しましたが,新規睡眠薬は依存や耐性,反跳性不眠などの副作用がないことが本研究の長期処方リスクに関する結果に影響したと考えられます.
本研究は,科学雑誌『JAMA Network Open』に2024年2月19日に受理されました.
参考URL
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2817706