お知らせ
2024年10月04日(金)
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 富澤 宏基 医員、総合診療・検査診断学講座 植木 重治 教授が著者となる学術論文が米国胸部疾患学会誌「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」に掲載されました。
論文タイトル
Characteristics and regulation of human eosinophil ETosis in vitro
著者名
Hiroki Tomizawa, Misaki Arima, Yui Miyabe, Chikako Furutani, Sahoko Kodama, Keisuke Ito, Ken Watanabe, Ryo Hasegawa, Shohei Nishiyama, Keinosuke Hizuka, Takechiyo Yamada, Shigeharu Ueki
掲載誌
American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology
研究等概要
細胞の死にかたはひとつではなく、異なる細胞死を選択することが生体の機能調節に重要な役割を持っています。近年になってわかってきた細胞死のひとつに、「エトーシス(ETosis)」があります。エトーシスでは網状のDNAからなる「細胞外トラップ」が放出されますが、これは病原体を捕捉して殺傷する自然免疫としての働きを持っています。一方で、細胞外トラップは炎症を悪化させる場合もあり、種々の疾患の悪化に関連していることが知られています。
これまでの研究では、細胞の種類によるエトーシスの違いや、細胞外トラップに含まれる蛋白成分の違いはほとんどわかっていませんでした。そこで研究チームは、ヒトから分離した白血球を用いた一連の研究を通して、その特徴を検討しました。
まず、ヒトの血液から分離した白血球(好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球)を共通の刺激因子で活性化させて細胞死の誘導が起きるかどうかを調べたところ、好酸球と好中球のみが、すみやかにエトーシスを起こすことがわかりました。次に、好酸球と好中球の細胞外トラップの蛋白成分を網羅的に解析して、その構成成分が細胞によって異なることを示しました。さらに、種々の生理的活性化因子の中から、サイトカインとケモカインの複合刺激(IL-5とエオタキシン)が、好酸球にエトーシスを誘導することを新たに見いだしました。この複合刺激に対する好酸球の反応は細胞外の環境の違いによって大きく異なっており、培地中のアルブミンや血清の濃度が低いとエトーシスを選択する一方で、濃度が高いと生存を延長させたのちにアポトーシスを起こすことがわかりました(概念図)。
好酸球はアレルギー反応に関与する白血球で、好酸球のエトーシスは好酸球性副鼻腔炎や喘息などの疾患の難治化に寄与しています。本研究は研究者にとって基盤的な知見になるだけでなく、アレルギーなどのメカニズム解明につながるもので、将来的に新しい検査や治療法につながることが期待されます。
参考URL
https://www.atsjournals.org/doi/10.1165/rcmb.2023-0438OC