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2025年06月24日(火)
救急•集中治療医学講座 佐藤 佳澄 病院講師が代表著者となる学術論文が国際誌『Critical Care』に掲載されました
論文タイトル
Clinical features and treatments of VEXAS syndrome in critical care: a scoping review
著者名
Kasumi Satoh, Yasushi Tsujimoto, Daisuke Kasugai, Kazuki Okura, Sarah Kyuragi Luthe, Takao Ono, Yuki Miyamoto, Tasuku Matsuyama, Manabu Okuyama, Taketo Watase, Hajime Nakae, Tadahiro Goto
掲載誌
Critical Care
研究等概要
新しい重症疾患「VEXAS症候群」の集中治療管理に関する体系的な情報を世界で初めて発表
救急・集中治療医学講座の佐藤らの研究グループは、2020年に新たに発見された重篤な疾患「VEXAS症候群」について、集中治療を要する重症患者の臨床的な特徴と治療法を明らかにした世界初の体系的な検討成果を発表しました。本研究は、Critical Care誌(インパクトファクター:8.8)に掲載されました。
VEXAS症候群は、主に50歳以上の男性に発症する新しい疾患で、全身の激しい炎症と血液の異常を特徴とします。発見からわずか数年という新しい疾患のため、重症化した患者の管理方法については十分に解明されていませんでした。研究グループは、世界中の医学文献1,262報告を詳細に検討し、78の研究報告から55症例の重症患者情報を含むデータを抽出・分析しました。
研究の結果、VEXAS症候群の患者は集中治療室での治療を要する場合も多く、死亡率が18-40%に達する重篤な疾患であることが判明しました。特に敗血症が最も多い死因とされ、ショックや急性呼吸不全、血栓症などの生命に関わる合併症が発生することも確認されました。
治療面では、従来の集中治療に加えて、過剰な免疫応答を抑制したり調節したりする治療が重要であることが示されました。しかし、免疫を抑制することで感染症のリスクが高まるため、両者のバランスを慎重に管理する必要があります。
診断が難しい新疾患の適切な診断・治療に向けたガイドを提示
本研究の最大の特色は、発見されて間もない希少疾患について、国際的な研究データを統合して重症管理の実態を初めて体系的に明らかにした点です。VEXAS症候群は症状が多様で、他の疾患と間違えられやすく、正確な診断と適切な治療が困難と考えられます。今回の研究により、重症化の兆候や治療方針について具体的な方向性が示され、集中治療領域における本疾患の注目度が高まります。このことで集中治療領域におけるVEXAS症候群の正確な診断や、標準治療策定に関する今後の研究の礎になることが予想されます。さらに、本疾患は集中治療医、血液内科医、リウマチ科医など複数の専門領域にわたる疾患であるため、各科の連携の重要性が改めて確認されました。